DATE : 2006/11/05 (Sun)
とある小学校の、ある日の昼休み・・・
「ねえねえ、僕の考えたクイズに挑戦してみない?」
と言ったのは、正くん。
正くんは二時間ドラマが大好きで、毎回録画したビデオをクラスメートに配っている。
「面白そうね」
と言ったのは、文ちゃん。
文ちゃんは正くんとは違い、二時間ドラマに情熱を燃やしているわけではなかったが、正くんのおかげ(せい?)で謎解きは好きである。
「ふん、俺に解けない謎はないな!」
と言ったのは、武くん。
武くんは口だけの所がある。
というわけで、正くんの考えた問題に文ちゃんと武くんは挑戦することになった。
(以下、わかりやすく「」の前に名前を記す)
正「よし、じゃあ始めよう」
文「早く早く!」
武「五秒で解いてやるよ」
正「ここは、とある町・・・」
文「まあ、そりゃあどこかで何かが起こるわけよね・・・」
武「よし、わかった!町の名前は『とある』だ!!」
正「・・・」
文「・・・」
武「おっ、いきなり正解か~悪いね!」
正「・・・まだ問題の途中なんだけど。というか、まだ何も起きていないんだけど・・・」
文「少し黙ってなさいよ」
武「・・・」
正「では、気を取り直して。この町では、利用客は少ないけれどもバスが通っている。まあ、普通の町だね」
文「ふむふむ」
武「わかった!町の名前は・・・」
正「・・・で、その日バスの運転手さんにとても困ったことが起こったんだ」
文「ふむふむ」
武「困ったぞ・・・正解がわからない・・・」
正「少し時間を戻すよ。運転手さんに何かが起こる前から話すことにするね」
文「まあ、今のところはフェアかしらね」
武「ああ、たしかにフェアだ。さすが文!」
正「あんまり時間を戻しても意味がないから、そのバスがその日最後にコースを巡回する所からね」
文「コースはいつも同じなの?」
正「うん。ちなみに、停留所は10個ね。そして、その日最後だから10個目の停留所、つまり終点を通過した後は車庫まで戻ることになってる」
文「なるほどね。私はバスについては詳しくないけど、たぶんそんなもんかしらね」
正「うん。僕だって詳しくはないけどね・・・」
武「つまり、巡回コース云々はあんまり関係ないってことか・・・」
正「(武のやつ、たまに的を射ているから怖いな・・・)」
文「(この沈黙、怪しいわね・・・)」
武「(あれ、外れたのか?ドキドキ・・・)」
正「・・・とにかく、1個目の停留所から。もちろん、お客さんにとってはそこが出発点だから誰も乗っていない」
文「最初から誰かが乗っていた、というトリックではないようね・・・まあ、まだ謎が何かもわからないけど」
武「ちょっと待てよ・・・運転手さんが乗っているじゃないか!」
正「まあ、そりゃそうだけど・・・」
文「いいから話を進めてよ」
正「うん、わかった。まず最初の停留所では、一人のお客さんが乗った」
文「ふむふむ」
正「2個目の停留所では、一人乗って、一人降りた」
文「ふむふむ」
正「3個目の停留所でも、一人乗って、一人降りた」
文「ふむふむ・・・」
正「4個目の停留所でも、一人乗って、一人降りた」
文「ふむふむ・・・って、すでにミステリーじゃない?気持ち悪いわね・・・」
正「まあまあ、そこは深く考えないで・・・」
キンコーンカンコーン
昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
武「あ~あ、結局、謎解けなかったな~」
文「いや、まだ問題の途中よ・・・」
正「残念だ・・・続きは放課後にでも」
文「あのさあ、お客さんの乗り降りを紙にまとめといてくんない?少し退屈してきたから・・・」
正「あ、そう?」
文「だって、停留所10個もあるんでしょ?それに問題の整理にもなるし」
正「わかったよ。授業中に作っとくね」
キンコーンカンコーン
放課後・・・
正「さあ、昼休みの続きだ!」
文「正って、ホントにこういう話好きよね~」
武「さっき先生に怒られてなかった?違うことやってて」
正「(げっ、コイツに見られた・・・)」
文「(おっ、動揺してる。ニヤニヤ・・・)」
武「(あれ、勘違いかな?)」
正「そうそう、お客さんの乗り降りをまとめたよ。というか、それが問題に関係あるんだけどね・・・」
文「ほほう・・・」
★お客さんの乗り降り・まとめ★
停留所① 一人 乗る
停留所② 一人 乗る 一人 降りる
停留所③ 一人 乗る 一人 降りる
停留所④ 一人 乗る 一人 降りる
停留所⑤ 一人 乗る 一人 降りる
停留所⑥ 一人 乗る 一人 降りる
停留所⑦ 一人 乗る 一人 降りる
停留所⑧ 一人 乗る 一人 降りる
停留所⑨ 三人 乗る 一人 降りる
停留所⑩ 一人 降りる
正「こんな感じで」
文「ふーん・・・って、計算が合わないわね」
武「え、どこが?」
正「まあ、そこはちょっと置いておいて、話を続けるよ」
文「(計算間違いというイージーミスではないらしいわね・・・顔色を見ればわかる・・・)」
武「(何が違うんだろう・・・?)」
正「10個目の停留所で最後のお客さんが降りたのを確認して、運転手さんは車庫へと戻った」
文「ふーん・・・」
正「で、バスは車庫へと着いた。運転車さんは、車庫へ戻ると車内を点検する。忘れ物があったりするからね」
文「で、重要な忘れ物があったのね」
正「そう。バスには二人お客さんがいたんだ」
武「なんで?」
正「いや、それを解いてもらいたいわけなんだよ・・・」
文「なるほどね・・・」
武「えーと、1+1-1+1-1+・・・」
文「そうね・・・二人のお客さんは死んでいたとか?」
正「いや、生きていた。お客さんであって、死体ではないからね」
文「じゃあ、二人は人間ではなかったとか?例えば犬?」
正「二人だから人間だよ。ついでに言えば、二人はシートの上で眠っていた」
文「うーん・・・」
正「おっと、降参か?」
文「うーん・・・」
正「ふっふっふ~」
文「悔しいけど、わからないわ・・・降参よ」
正「イェイ!」
文「・・・なんで、運転手さんは二人に気がつかなかったわけ?」
正「それはね・・・」
文「うん・・・」
正「二人は、赤ん坊だったんだよ」
文「ああ・・・なるほど」
正「9個目の停留所で三人乗った内の二人が赤ん坊だった。で、10個目、つまり最後の停留所で二人の赤ん坊を置いて一人が降りてしまった」
文「・・・たしかに、赤ん坊ならシートの上で寝ていれば気がつかないかもね」
正「ね?それに車庫までは距離もそんなにないはずだから、赤ん坊が起きない可能性は十分にあるし」
文「正が最初に言った通り、運転手さんはさぞ困ったことね」
正「そうだね」
武「ん・・・?」
正「お、武どうした?感動したか?」
武「この話、なんかおかしくないか?」
正「おっ?どこがおかしい?」
武「なんで、停留所⑨で3人乗った、って書いてあるのに運転手さんは、最後の停留所で1人しか降りなかったのを変に思わなかったわけ?」
正「(ムムッ、イヤなトコを突いてくるな・・・)」
文「そう言われてみればそうね・・・どうなのよ、そこんとこ?」
正「あのね、普通小説では神の声、つまり地の文には嘘は書いてないでしょ?それと一緒だよ。運転手さんは気がつかなかったとしても、実際に起こったことはちゃんと情報として提供しなくてはならない・・・」
文「二時間ドラママニアのくせに、小説を引き合いに出すのね・・・言ってることはあながち間違ってもいないけど」
武「いや、やっぱりおかしいって」
正「何が?神の声は絶対だって!」
武「いやいや・・・赤ん坊一人ならまだしも、二人だぜ?気がつくだろう、普通」
正「・・・」
文「そうよね。乗るときに気がつくはずだから、降りるときに赤ん坊が一緒じゃなかったら、絶対おかしいわよね」
正「ほら、例えば乗るときにバックの中に入っていたとかさ・・・」
文「それなら、そういう描写を話の中に織り交ぜないとフェアじゃないわよね」
正「それは、文のせいだろ!お前が退屈だから簡単にまとめろとか言うから!」
文「何よ!あんたがつまんない話するからいけないんでしょ!こんなしょうもない結末作っちゃってさ!」
武「まあまあ、ケンカすんなよな・・・」
正「元はと言えば!武!お前が下らないことに疑問を持つからして・・・」
武「あん?俺がいけないのか?」
文「いいえ!全面的に正が悪い!下らないのはそっちよ!」
武「まあまあ、文。そこまで言うこともないだろ」
文「何よ!何か文句あんの?」
正「あるよ、文句ならさぁ!」
文「あんたには聞いてない!!」
武「なんかややこしいことになってきたな・・・」
武くんは今回の件で少し成長したらしい・・・
オチが弱くて常任湯気上人もさぞ困ったらしい・・・
これでは、コメント返しもオチオチできない・・・